量子凝縮相、強相関系、超伝導・超流動、冷却原子・分子系、トポロジカル量子現象
物理学において新しい概念を絶え間なく生み出しているものに量子多体現象がある。"More is different" (P.W.Anderson,1977年ノーベル物理学賞)という言葉に代表されるように、多くの粒子の集合体である凝縮系では、量子力学などのミクロな理論からだけでは予言できないような新しい現象が現れる。創発性(emergence)がまさにこの本質をつくものであり、超伝導や超流動に代表される「対称性の自発的破れ」とそれに伴う相転移がその典型例となっている。量子物性物理(あるいは凝縮系物理)と呼ばれている分野は、このような創発性の宝庫となっている。強相関電子系、冷却原子・分子系、液体ヘリウム、トポロジカル物質系、量子スピン系などの量子多体系を舞台として、新奇な量子凝縮相が次々に予言、発見そして解明されており、大きな研究の広がりを見せている。
「量子物性理論群」では、このような凝縮系に現れる量子現象の理論的研究を行っている。量子力学、統計力学、電磁気学に基づき、物質の示す多様な性質を微視的に解明するとともに、その背後にある普遍的な物理を理解することを目指している。エキゾチックな超伝導・超流動現象、モット絶縁体転移、量子磁性など、強相関系が示す多彩な現象をミクロな観点から解明するとともに、さらに近年急速に研究が進んでいる冷却原子・分子系の量子現象にも研究を展開している。これらに加えて「トポロジカル量子現象」という新たな切り口からも量子凝縮相の研究を行っている。
本分科群には、
という2分科があり、上で述べた量子物性理論の広い研究分野をカバーしている。