不規則系物理学分科

助教 永谷 清信

自然界には階層構造を縦断し、量子現象に始まり非平衡過程に到る多くの現象があります。本分科では、このような現象のモデルとなりうる状態を実験室で実現させるために、電子系と原子系が強い相関をもつ液体やクラスター(数個から数万個の原子集団)を研究対象として取り上げ、その微視的および巨視的物性をシンクロトロン放射光やX線自由電子レーザー(XFEL)などを駆使して研究しています。

流体金属の物性研究

気液臨界点を超える温度圧力領域では液相-気相の区別のない超臨界状態となります。液体金属を超臨界状態まで膨張させると金属-絶縁体転移が起こります。この転移の本質を解明するためには、構成粒子(電子・イオン)間の多体相互作用の理解が必須です。本分科では、この問題に対して、放射光を用いて構造や電子状態の測定を行うなど、実験的手法を駆使することにより取り組んでいます。

非平衡クラスターにおける電荷ダイナミクス

原子・分子が集合した少数多体系をクラスターと呼びます。クラスターの物性はサイズに強く依存しており、原子・分子と凝縮系の中間相として、物質の階層性を解明する鍵と期待されます。また、表面の割合が大きく、1つの粒子中に環境の異なる原子が存在する不均一性の強い系であり、原子レベルでの物性研究が求められます。本分科では、国家基幹技術であるX線自由電子レーザー(XFEL)を用いたクラスター研究を進めており、超高輝度・超短パルスのコヒーレントX線という全く新しい光とクラスターとの相互作用についての研究を進めています。最近では、XFEL利用の不規則系3次元構造解析法の構築とそれに関連する多重励起クラスターにおける電荷・エネルギー移動の非線形・非平衡特性の解明に取り組んでいます。