物性基礎論:統計動力学分科

スタッフ 教授 早川 尚男
准教授 村瀬 雅俊
助教 渡辺 優


非平衡統計物理はまだ枠組が完成されていない未開の沃野です。実験技術の進展に伴い従来の物性分野の現象だけでなく最近のハドロン・コライダーの実験に伴う急激な熱化や非平衡現象がホットな話題になっている原子核から、惑星形成や重力多体系の統計が問題になる宇宙物理、地震現象や火山現象、地形の数理といった複雑な多体系である地球科学、微小生物や生物機械の運動や熱効率、遺伝情報の発現の統計を扱う生物物理、化学、工学の諸分野から為替変動の予測等の経済学に及ぶ幅広い分野で非平衡統計力学の概念が使われ同時にその基礎分野の発展が強く求められるというフィードバックがかかっています。これらの諸分野でのホットな応用例に一般的な枠組を与えると期待できるのはまさに当研究室の研究している非平衡統計物理学であり、そのフロンティアを切り拓く若い力の参入を求めています。

粉体・ジャミング

砂やゴマのような巨視的な大きさを持つ粒子の集まり粉体と呼ぶ。この写真に写っているゴマ粒の数は数千から数万といったところであり、熱力学極限とは程遠い数である。また「平衡状態」は熱的平衡ではない事は見ての通りである。 このように散逸多体系が当研究室の大きな研究課題となっている。粉体系の密度を上げるとある臨界密度以上で固体的な応答を示すようになるが、それはジャミング転移と呼ばれる。このような非熱的相転移も当研究室の大きな研究課題である。

メゾ系における輸送現象と量子測定

半導体デバイスの微細加工によって得られる量子ドットなどのメゾスコピック系における輸送現象や、その系に対する量子測定の反作用の影響を研究している。例えば、平均的には電位差の無い系に電流が流れる量子ポンプと呼ばれる現象の解析を行っている。また、電流を測定した際の反作用による電流揺らぎへの影響にも関心を持っている。さらに、不確定性関係や連続測定など、量子測定理論の基礎にも関心を持って研究を行っている。

微小機関の熱力学

近年、実験技術の向上により揺らぐ微小系の熱力学構造が明らかにされてきている。熱統計力学の研究は熱機関の研究と古くから不可分であり、微小系の熱機関の性質は基礎・応用の両観点から注目を集めている。我々は微小系の熱機関の研究を『確率過程によるモデル化』や『分子動力学計算』等を用いて行っている。