リーダー挨拶

リーダーご挨拶

川合 光

自然界は、素粒子から宇宙にいたる様々な階層から成り立っています。このそれぞれの理解を深めようというのが多様性の追求です。他方、これらすべてのもとになっている基本法則や、いろいろな系に対して広く成り立つ法則を見つけようというのが普遍性の追求です。これらは独立なものではなく、一方の発展が他方の発展をうながすという具合に、あいまって人類の自然認識を進歩させてきました。

多様性に対する認識を、単に自然界にはいろいろな現象があるのだという受身の立場からもう一歩進めたのが創発という概念です。原理的には、どんなに複雑な現象も単純な基本法則から生じているはずです。しかしながら、たとえ基本法則がわかったとしても、自然界には予想もできない多様で新しい現象がおきています。これらは、一旦認識されてしまえば基本法則から説明することはできますが、少なくとも歴史的には、基本法則からの演繹によって得られたものではありません。すなわち、自然界においては無限に多くの多様な現象が創発しているというわけです。

このように考えますと、なぜ物理学にとって普遍性と多様性の両方が重要であるかがわかりやすくなります。すなわち、ある現象の創発が発見されたとする。そうすると、まったく違った系に対しても同様の現象がおきる可能性があり、新しい創発が予想される。それが確認されると、それらの現象が創発するメカニズムが一つの普遍法則として得られる。その新しい法則性はもっともミクロなレベルでも現れる可能性があり、基本法則の探求が進む。といった具合です。

本拠点は、このような普遍性と創発性のからみあいを物理学の本質ととらえ、次世代の物理学を積極的に開拓していこうというものです。それには、物理学を細かい分野に分けてしまうのではなく、全体を見渡せるようにするのが大切です。そのため、本拠点は京都大学理学研究科の物理学・宇宙物理学専攻が一体となり運営しています。具体的には、物理学第一、物理学第二、宇宙物理学の三教室からなる基幹講座に基礎物理学研究所をはじめとする協力講座が加わり、京都大学の物理学を結集した組織になっています。

京都大学は長い歴史をもつ定評のある研究機関として外国からの訪問も多く、また、基礎物理学研究所は国際会議や研究会の開催を業務とする共同利用研究所として、世界の同様な研究所の先駆けとなってきました。本拠点ではこうした実績を背景にして、京都大学が次世代の物理学を発信する世界的な基地として、また、自立してフロンティアを開拓できる人材を養成する国際的な拠点として発展していくことを目指しています。

拠点リーダー 川合 光