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平成23年7月15日

成子篤さんと佐々木節教授の論文が「IOP Select」に選ばれました。

基礎物理学研究所学振特別研究員(D3)の成子篤さんと同研究所の佐々木節教授の論文 「一般的な単一場インフレーションにおける非線形曲率揺らぎの保存」が「IOP Select」に選ばれました。 IOP Select は英国物理学会 (IOP) 出版部が発行する全ての学会誌の中から選ばれ、 当該分野に重要な発展を与えた、もしくは将来の研究に重大な影響を与える事が期待される論文を集めたものです。 選ばれた論文には365日間無料でアクセスする事が出きます(詳しくはこちら)。

宇宙の開闢は約140億年前と言われています。宇宙が出来て約40万年後、 電子や陽子と相互作用していた光子はそれらから切り離され伝播し始めます。 これを宇宙の晴れ上がりと言い、この光子を宇宙マイクロ波背景輻射と言います。 1964年に初めてこの光子は捕らえられ、3Kの黒体輻射が観測されました。

宇宙には銀河や銀河団といった大きなスケールでの非一様な構造があります。 これらは太古の宇宙において物質の密度に揺らぎがあり、それらが重力の作用で成長して出来たものと考えられています。 すると宇宙背景輻射には、この宇宙の始原的な密度揺らぎに対応した温度の揺らぎが存在することになります。 実際この温度揺らぎが観測され、晴れ上がりの時の宇宙は基本的には一様であり、 その上に微小な10万分の一の揺らぎを持っていることが分かりました。

この極めて一様な宇宙とその上の微小な揺らぎの存在をうまく説明するモデルがインフレーション理論です。 インフレーションは、宇宙誕生後すぐの宇宙の急速な膨張の事を言い、この急速な膨張の結果、 宇宙が引き延ばされ一様性が実現されます。 また、ミクロの世界の量子的な揺らぎが超マクロの宇宙論的揺らぎに引き伸ばされ、 それらが成長して銀河や銀河団などの現在の宇宙の構造を形成したと考えられています。 この宇宙論的揺らぎの生成や発展を正確に理解する事が、宇宙論において最も重要なテーマの一つとなっています。

成子さん達は上記の論文で、現在提案されている全てのインフレーションモデルに適用できる、 宇宙論的揺らぎの大きさを予言するのに重要な役割を果たす、ある保存則を証明しました。 この証明により、インフレーション中の揺らぎの理解が格段に進み、 この結果を基にした様々な研究がこれから展開される事が予想されます。