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平成23年6月13日

基礎物理学研究所の板垣直之准教授が平成23年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞

 2011(平成23)年4月、基礎物理学研究所の板垣直之准教授が 平成23年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。

 この賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す 顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に与えられるものです。 今年度は板垣准教授を含めて82名の方々が受賞されました。

 板垣准教授が受賞された内容は、 「中性子過剰原子核における幾何学的クラスター構造の理論研究」というテーマです。 比較的軽い原子核の励起状態にあらわれる多彩な核構造のうち、 中性子過剰原子核において幾何学的なクラスター構造の安定性について 理論的に研究をされました。

 通常、原子核は核子(陽子と中性子)から構成されているため、 それらの核子が原子核の中で独立な運動を行うと考えられています。 一方で、原子核の励起状態では、陽子2個と中性子2個によって構成される α($^{4}$He原子核)粒子が種となったαクラスター状態が発達することが知られています。 これまで板垣准教授は、その原子核の励起状態における クラスター構造の研究を自然界に多く存在する原子核(一般に安定核と呼ばれるもの)や β崩壊を起こす不安定な原子核(一般的に不安定核と呼ばれるもの)に対して 研究をされてきました。

 これまでの板垣准教授の研究の結果では、安定核と比べて中性子を多く持つ不安定核において、 その余剰中性子が“糊”的な役割を果たすことによって、 これらのαクラスターの幾何学的な配置が安定な状態になることを示すことができました。 具体的に、炭素原子核の同位体では3αの正三角形構造や直線配位、 酸素原子核の同位体では4αの正三角錐構造が安定化することを示しました(図)。

 さらに板垣准教授は、その励起状態を分類・分析するために原子分子で用いられる分子軌道法を 適用しました。そして励起状態におけるクラスター構造の発現のみならず、 基底状態付近において、原子核の標準的な理解である「核子の独立な運動」と 「クラスター構造」の競合についても検証をされました。また、原子核構造計算のみならず、 原子核反応計算へと接続することで、実際の実験でクラスター状態が どのように観測されるかという点についても示されました。

 板垣准教授は、1999(平成11)年3月に北海道大学大学院理学研究科で博士(理学)の学位を 取得した後、1999年4月から理化学研究所で基礎特別研究員、2000年4月から東京大学で助手、 2006年4月から東京大学で特任助教授(2007年4月より特任准教授)、 2010年4月からは京都大学基礎物理学研究所で准教授に着任され、現在も研究に励んでおります。
(図) 左側は、原子核のエネルギースペクトルとそれらの状態を分類したもの。 右側は、その幾何学的クラスター状態を三次元的に描いたもの。