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平成23年2月1日

新説:極高エネルギー宇宙線の起源は天の川銀河内ガンマ線バーストか?

[図の説明:天の川銀河内で起こったガンマ線バーストの想像図。超新星爆発(オレンジ色)と共にガンマ線バーストジェット(青色)が発生し、ジェットから最高エネルギー宇宙線が噴出している。イラストは京都精華大学芸術学部洋画コース・梶泰幸(かじ やすゆき)氏による。]

宇宙に存在する10^20eVにも達するエネルギーを持つ宇宙線、即ち極高エネルギー宇宙線の起源は未だに解明されておらず、現代の宇宙物理学上、大きな謎となっています。極高エネルギー宇宙線はその到来方向が(天の川銀河面に集中せず)ほぼ空間的に等方に飛来すること、および現在の天の川銀河には極高エネルギー宇宙線を加速出来る程の活動的天体が存在しないことなどから、従来はその起源は天の川銀河中の天体でなく、天の川銀河外天体の激しい活動性を示す天体であろうと考えられていました。 近年、世界最大の極高エネルギー宇宙線検出グループ・ピエール・オージェイ観測所は非常に興味深い報告を行いました。それは極高エネルギー宇宙線の組成に関する報告です。彼等は、10^18eV程度の宇宙線は陽子が卓越しており、エネルギーが上昇すると共に鉄の割合が増えていき、3×10^19eV程度に達するころにはかなりの宇宙線が鉄で出来ていると報告したのです(極高エネルギー宇宙線組成の決定は地球にこれらが降り注ぐ際に形成するシャワーの発達具合から推定するため、統計的な議論の末に推定されます。この統計的な不確定性のため、ピエール・オージェイ観測所が報告した組成の情報は3×10^19eVを上限とするものであり、それ以上のエネルギーの宇宙線組成についてはまだ言及していません)。

この報告を受け、Calvez、Kusenko、長滝は従来と異なる極高エネルギー宇宙線(10^18eVから3×10^19eV程度に至るまで)の起源について新説を提唱しました。即ち、これらの極高エネルギー宇宙線は、天の川銀河内で過去に起こった巨大爆発、ガンマ線バーストが起源である可能性を指摘したのです。この新説は2010年度、Physical Review Letters誌に掲載され、NatureのResearch Highlightsでも紹介されました。我々のアイデアは以下の通りです。天の川銀河で起こったガンマ線バーストは十分活動的であり、極高エネルギー宇宙線を生成出来ます(イメージ図参照)。ガンマ線バーストは陽子と鉄(原子核)両方を加速します。しかし、陽子がすぐに銀河から出て行くのに対して、より大きな電荷を持つ鉄は銀河内に渦巻く磁場にトラップされて、陽子に比べて永く銀河内に留まるのです。その結果、我々の銀河系内では鉄密度が増大し、ピエール・オージェイの観測が示すように大量の鉄が地球に降り注ぐことになるのです。更にこの銀河磁場トラップ効果により、極高エネルギー宇宙線の進行方向が充分曲げられ、地球に到達する頃には充分等方的になっているのです。 更に我々は、3×10^19eV を超えた、10^20eVに至る極高エネルギー宇宙線の起源についての言及も行いました。10^20eVに至る程の極高エネルギー宇宙線ともなると、我々のシナリオですら等方性、エネルギースペクトルを説明することが難しくなります。従って天の川銀河外の、しかもガンマ線バーストとは異なる天体、例えば近傍に存在する活動銀河核などが有力候補なのではないかと結論づけており、今後ピエール・オージェイ観測所や日本のテレスコープアレイによる極高エネルギー宇宙線起源解明に期待しています。

発表雑誌:Physical Review Letters 2010年8月20日号
NatureのResearch highlightsでも紹介されました (Nature Physics 6, 636
(2010))。http://www.nature.com/nphys/journal/v6/n9/full/nphys1786.html
論文タイトル:超高エネルギー宇宙線成分のエネルギー依存性観測結果が示す銀河内ソースと磁場の役割
著者: Antoine Calvez (UCLA)、Alexander Kusenko (UCLA/IPMU)、長滝重博(京都大学基礎物理学研究所)