ハイライト

平成22年1月22日

銀河の仕組み解明へ”星のゆりかご”立体図

―宇宙X線スペクトル・トモグラフィー

 天の川は1000億個の「太陽」が渦巻く渦状銀河です。渦巻きの中心には300万個の太陽に相当する巨大質量ブラックホールがあり、1000光年内の周辺には3000万個の「太陽」を生み出せるほど大量の分子ガスが分布しています。分子ガスの塊は分子雲になり、収縮して星が生まれます。渦巻きの中心に落ちた分子ガスを飲み込んでブラックホールは成長します。このような分子ガスのダイナミックスは、その空間分布と密接に関係しています。分子ガスが棒状の分布なら、容易に分裂して分子雲をつくり、一部は中心に落ち込みます。天の川中心部における星生成やブラックホール成長などの解明に分子ガスの空間分布が鍵を握っているのです。 物理第二教室の大学院生(修士二年)の劉 周強を中心とするチーム(同大学院生・福岡亮輔、信川正順、名誉教授・小山勝二、准教授・鶴剛)が 「宇宙X線スペクトル・トモグラフィー」と名付けた新たな手法を開発し、天の川銀河中心領域の分子ガスの空間分布を得ることに成功しました。

 分子ガス分布の解明は従来から電波観測で行われてきましたが、得られた描像は不確実なものでした。私たちは天の川中心領域に一様に存在する超高温(約7000万度)のプラズマを発見しました。このプラズマはX線を放射します。そして分子雲はその中に浮かんでいます。「すざく」衛星はこれらの研究をさらに進めるため、世界初のX線投影写真をとりました。分子雲は外部からのX線に照射されると特有のX線(特性X線という)を再放射します。特性X線の観測で分子雲の空間分布がわかることになります(上図)。しかしこれは分子雲の平面分布であり、奥行き方向はわかりません。

 私たちからみて分子雲の背後からでるX線は分子雲で吸収されます(中図)。病院で撮るX線写真と同じです。しかし前面からのX線は吸収されません。したがって私たちが観測した天の川中心付近のX線はこれらの混合になります。その混合比がプラズマ中の分子雲の位置(奥行き方向)になります。

 大量の観測データを分析し詳しく解析した結果が下図です。上図と合成すれば分子雲の立体分布が分かります。それは約30度傾いた棒状の分布、つまり激動の天の川中心の一瞬を捕らえたX線スナップ写真だったのです。

なおこの成果は、2009年10月に新聞報道されました。