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平成21年8月17日

高エネルギーニュートリノでマグネターの誕生を探る

 
太陽よりずっと重い星が死を迎えると超新星爆発を起こし、残った芯として主に中性子から成る非常に高密度の星ができます。このような中性子星の一部は、マグネターと呼ばれる途方もなく強力な磁場を持つ中性子星になると考えられており、その磁場強度は10の15乗ガウスにも達すると言われています。これまでマグネターと思われる18個の天体が見つかっていますが、その強大な磁場の起源についてはよくわかっておらず大きな謎の一つとなっています。 基礎物理学研究所の村瀬孔大・学振特別研究員(D3)は、ペンシルバニア州立大学のPeter Meszaros教授、ネバダ州立大学ラスベガス校のBing Zhang教授との共同研究で、もし生まれたばかりのマグネターが強力な粒子加速器となっているならば、その磁場の起源についての重要な手がかりが地球上で検出される高エネルギーニュートリノに含まれている可能性があることを指摘しました。

 マグネターの磁場生成機構として提案されている有力な説の一つにダイナモ仮説があります。生まれたばかりの中性子星がミリ秒程度の短い回転周期で自転しているとこのダイナモ機構が働いて強い磁場ができると考えられています。このような高速回転するマグネターでは粒子が高エネルギーまで加速されることが期待でき、マグネターが地上で観測される10の20乗eVにも達する超高エネルギー宇宙線の起源になっている可能性すらあります。上記グループは、このような条件下では、宇宙線陽子がマグネター周囲の冷たい核子(超新星爆発の残骸)や熱光子と相互作用することにより、高速回転するマグネターに特徴的なニュートリノフラックスが生じることを示しました。このようなニュートリノシグナルはIceCubeなどの大容積ニュートリノ観測装置で検出できる可能性があります。IceCubeは南極の氷に埋め込まれた容積1立方キロの検出器アレイで、2011年に最大運用能力を達成する予定です。 ダイナモ機構でできた高速回転マグネターが粒子加速器になっている可能性は興味深いですが、加速メカニズムなど理論的にも多くのことがわかっておりません。上記グループの研究成果は、これらの可能性そのものを支持するというわけでは決してありませんが、マグネターのダイナモ仮説や超高エネルギー宇宙線のマグネター起源説の検証など、未知の現象解明の為の手段として将来の高エネルギーニュートリノ観測が潜在的に有用であることの一例を示したと言えるでしょう。この研究成果はPhysical Review D誌に発表され、Nature Physics誌にハイライト記事として紹介されました。