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平成21年05月11日

巨大ブラックホール ガス落下によるフレア現象を観測

天の川銀河の中心には、重さが太陽の約400万倍もある超巨大ブラックホール「いて座Aスター」があります。宇宙物理学教室の西山正吾・日本学振特別研究員(PD)、長田哲也教授は、国立天文台、名古屋大学、ケルン大学、アンダルシア宇宙物理学研究所との共同研究で、すばる望遠鏡を用いた「いて座Aスター」の観測を行いました。その結果、近赤外線の偏光の連続的なフレア現象をとらえました。

「いて座Aスター」は銀河系の中心にあります。そこは星やガス、塵などが集中し、非常に混み合った場所でもあります。その中からブラックホールだけを取り出すためには、世界最大級の望遠鏡が必要です。また塵に邪魔されずブラックホールを見るためには、可視光ではなく赤外線やX線などで観測をしなければなりません。さらに星のまたたきの原因である、地球大気のゆらぎの影響を消すような技術が必要です。上記研究グループは、8.2mの口径の鏡をもつすばる望遠鏡と近赤外線カメラCIAO(チャオ)、さらに大気ゆらぎを補正する補償光学システムAO36を使い、非常にシャープな画像を取得、混み合った領域でのいて座Aスターの観測に成功しました。

2008年5月28日には、一晩のうちに3回の爆発(フレア)現象が観測されました。まず観測開始直後、最初のフレア現象が起きました。これは比較的暗く、継続時間の長いフレアです。2番目のフレアは最も強く、40分程度の継続時間でした。最後のフレアは最も短い時間(6.5分)での増光/減光を示しました。6.5分の変動は、この現象が「いて座Aスター」の半径(シュバルツシルト半径)の約10倍という、ブラックホールのごく近傍で起こっていることを示しています。

フレアの明るさと偏光度の時間変化をモデル計算と比較すると、フレアを起こしている現象を解明するヒントが得られます。観測された時間変化の特徴は、“高温ガスの塊がブラックホールのすぐ近くを高速で回転している”というモデルで予想されるものとよく似ています。このモデル計算では、ブラックホールによる重力レンズ効果と、ガスが高速回転することによるドップラー効果とが明るさ、偏光度の時間変化の主な要因であるとされています。これらの推測が正しければ、ブラックホール近傍で起きている相対論的な現象が、「いて座Aスター」のフレアを起こしているということになります。